問題 – Question
〈それとなく言われていたと気づきたり黒きサドルを跨がんとして〉という巻頭歌で始まる、松村正直の第三歌集は何?
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解答 – Answer
『午前3時を過ぎて』
解説
『午前3時を過ぎて』は2014年(平成26年)に出版された、松村正直の第三歌集です。35歳から40歳までの作品555首が収録されています。
日常の場面から生まれた歌は、確かな輪郭をもって読み手に伝わってきます。詩的な部分を含みながらも、難解さを押し出さず読者を置いてきぼりにしない歌は読んでいて心地よいものです。
家族、特に子ども、またその他の人との関係を詠んだ歌も多く見られますが、どこか静かさを感じる詠い方が印象に残ります。それは対象との距離の取り方によるものなのかもしれません。決して他者を拒んでいるというのではなく、どれほど親しい間柄であったとしても、他者を見つめる際の著者のスタンスが短歌にも表れているということでしょう。
相手の存在を尊重するがゆえにずけずけと踏み込まない、そのような距離の取り方のうまさが歌の巧さに結実しているといえます。
この歌集により、第1回佐藤佐太郎短歌賞受賞。
『午前3時を過ぎて』から五首
右端より一人おいてと記されし一人のことをしばし思うも
包まれて妊婦のごときオムライス食べたりわれはケチャップを塗り
梅雨明けを待たずにひとに逢いにゆく砂鉄のような湿りを帯びて
われは地に打ち込まれたり肩車するまっすぐな背骨となって
饒舌になりゆくときのあやうさの、おしぼりに手をぐちぐち冷やす
松村正直 – BOOTH
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