問題 – Question
〈山頂のわが肌に触れいづくとも知れず過ぎ行く晩夏の風〉という巻頭歌で始まる、来嶋靖生の第十一歌集は何?
答えを表示する
〈山頂のわが肌に触れいづくとも知れず過ぎ行く晩夏の風〉という巻頭歌で始まる、来嶋靖生の第十一歌集は何?
『掌』
『掌』は2011年(平成23年)に出版された、来嶋靖生の第十一歌集です。70代後半の歌を収録しています。
来嶋靖生は登山を愛する歌人としても知られていますが、本歌集にも登山に関する歌が多く登場します。白山、帝釈山、奥白根山など、70代という年齢で挑んだ登山の歌が臨場感をもって迫ってきます。
機知や技巧に頼るのではなく、いのちや精神といった底から湧き出るような力がストレートに言葉となって表れていると感じます。
また第Ⅲ部「誄」は挽歌集となっており、姉、松尾一朗、緒方貫、松島啓介、藤得吉生、石本隆一、河野裕子、松尾和彦、玉城徹、紅野敏郎、石田比呂志に対する挽歌が収められています。
『掌』から五首
いつとなく坂は下りとなりゐたり蝶の姿は視界にあらず
五人囃子の笛方の笛失はれ指のみに吹くその指あはれ
さだかには地図の示さぬ道ながら春待つ木立縫ひつつ歩む
盛過ぎし白き花々降る雨に打たれて面をあぐるとはせず
全身は雨と汗なり先を行く妻のザックの赤を追ふ