問題 – Question
〈空晴れて今日のわたしはトツトツと靴のかかとで地球を回す〉という巻頭歌で始まる、早川志織の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『種の起源』
解説
『種の起源』は1993年(平成5年)に出版された、早川志織の第一歌集です。
本歌集には、植物を中心として、昆虫、魚、動物などが多数登場します。それはただ単に対象物として現れるのはなく、人間とのかかわりにおいて登場するのです。
農学部出身で植物に精通しているという背景が、これらの特徴的な歌を生み出してきた理由のひとつではあるでしょう。そこに登場する動植物、特に植物は、著者自身そして登場する人々とどうも溶け合っているような印象を受けます。自身と植物との境界を簡単に行き来するというか、そもそも人と植物との境目を殊更設けていること自体が不自然なことであって、身体的な感覚においては人も植物も違いはないということなのかもしれません。
植物を軸として展開される歌の世界は、ただの想像や発想のレベルではなく、生命に対するもう少し根源的なものが表れているように感じます。
第38回現代歌人協会賞受賞。
『種の起源』から五首
春の日の男の喉に球根のような突起は光りていたり
ファックスに送られてきし言葉らはヤマブキ色の電流を帯ぶ
水中に溶ける光を絡めんとサフランの根がガラス器を満たす
シャンプーの香りに満ちる傘の中 つぼみとはもしやこのようなもの
パピルスの生える水辺に真緑の裸のことばそよぎ始める