全角で数字を打つと決めているひとのメールはすこし優しい
笹川諒『水の聖歌隊』
笹川諒の第一歌集『水の聖歌隊』(2021年)に収められた一首です。
パソコンやスマホなどで文章を入力する際、数字を全角で打つか半角で打つかは個人の好みによるところが大きいでしょう。
毎回統一する人もいれば、その時々で使い分けるという人もいるでしょうし、はたまたどちらでも気にしないという人もいるでしょう。ひとつの文章の中で、全角と半角が混在している場合も見受けられます。
さて掲出歌は、メールの文章に使われた数字が全角であることに対して、そのメールの優しさを見ている歌です。
全角の数字は半角の数字よりも横幅が広い分、見た目で半角ほどの鋭さを感じさせません。一方半角はスリムではありますが、全角の平仮名や漢字の中に混じると、バランスが崩れ、より一層半角の数字の鋭さだけが目立ってきてしまうようにも思います。
そのあたりの見た目から、全角の数字を使ったメールを「すこし優しい」と感じているのではないでしょうか。決して「すごく優しい」ではありません。「すこし優しい」のです。
それは全角で打つと決めている人の気配り、心遣いを感じるからかもしれません。
数字の全角、半角の差異にメールの手触りを捉えた、興味深い一首だと感じます。