今日は寒かったまったく秋でした メールしようとおもってやめる する
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』
永井祐の第一歌集『日本の中でたのしく暮らす』(2012年)に収められた一首です。
季節は秋。しかも「まったく秋」というほどの、秋中の秋だったのでしょう。
メールをしようと思って、メールを送る行動に移ろうとするのですが、気が変わってやめてしまいます。しかしここでは終わらず、やっぱりメールを送信したのです。
「やめる」の後の一字空け、そしてたった二文字の「する」といういいきりの言葉。ここがこの一首の最大のポイントだと思います。
ここに、メールを送信しようかどうかという迷い、また決断の過程が、時系列を伴ってとてもリアルに伝わってきます。「やめる」の後に逆説の接続詞などを用いず、一字空けを置いたこと、そして結果だけを最小限の文字数で表す「する」という言葉によって、これらの効果がもたらされていると思います。
「やめる する」のところは何度読んでも、主体の気持ちの変化を感じることができ、とても惹かれる一首です。