メールの歌 #3

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メールの短歌

目をあけてことば奏づるはかなさや ボトルメールを流す朝なり
坂井修一『望楼の春』

坂井修一の第七歌集『望楼の春』(2009年)に収められた一首です。

ボトルメールとは、瓶に封じて海や川などに流された手紙を指す言葉で、英語では「message in a bottle」と表現されます。

ボトルメールが誰かの元にたどり着き、拾われる可能性はかなり低いと思います。それは行く先が不確かな海や川に流すからです。

手紙を詰めた瓶はゆらゆらと水面を漂いながら、対岸の、あるいは別の地域の、はたまた別の大陸の誰かに拾われるのを待っている、いってしまえば非常に頼りないものでしょう。

その頼りなさが「はかなさや」という言葉と呼応しているようです。

「目をあけてことば奏づる」という状況がいまひとつ捉えづらいのですが、言葉というものに対する著者の考え方が表れている部分だろうと思います。

言葉というものはもう少し慎重で、厳かで、重たいものだという思いがあるのかもしれません。それと同時に、言葉とは本来はかないものだという思いもあるのでしょう。

言葉はもともとはかないものだという認識があり、ボトルメールの不確かで頼りない部分にそれを重ねているのかもしれません。

一方で、ボトルメールには希望や期待が込められているでしょう。ボトルメールを海や川に流すときの感情は、決してはかないものだけではないはずです。誰かに届くかもしれないという可能性が、期待を抱かせてくれると思います。

言葉のはかなさに目を向ける一方で、言葉がもつ可能性にも目を向け、言葉の未来に期待する、そのような一首なのではないでしょうか。

ボトルメール
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