眠れない夜にネットの麻雀を消音にしてずっとしている
鈴木ちはね『予言』
鈴木ちはねの第一歌集『予言』(2020年)に収められた一首です。
ひと昔前の麻雀といえば、家であるいは雀荘で麻雀卓を囲んでするのが当たり前でしたが、インターネットが普及して以降、オンライン上で麻雀を楽しむことができるようになりました。
オンライン麻雀の場合、麻雀牌の手触りや、一緒に打っている人たちとの会話を楽しむことはできませんが、麻雀をやりたいなと思ったときメンバーがいなくても、一人ですぐに始めることができます。
掲出歌は、オンライン麻雀を眠れない夜にしている場面です。利用しているのはパソコンかスマホかわかりませんが、「消音」にしているのです。音がなくてもポン、チー、カン、リーチ、ロン、ツモなどの操作は画面を見ればわかりますから、音がなくてもまったく問題ありません。実際の麻雀では掛け声が必要ですからこうはいきませんが、「消音」にしても麻雀ができるというのはオンライン麻雀の一つの特徴でしょう。
消音にしている理由は何でしょうか。一般的に考えれば、すでに寝ている家族や同居人がいて、夜中に音を出せない状況というのが浮かびます。
しかしこの一首からは、一人でいる状況で音を出しても問題ないのだけれど、あえて消音にしているのでないかというふうにも感じました。どちらかといえば、音を聞きたくなくて消音にしているような印象を受けます。
そもそも主体はこの夜に「ネットの麻雀」を本当にやりたいのでしょうか。この歌からは、麻雀をやりたくてしかたがないというような感じがあまり伝わってきません。眠れない時間をただ何となく埋めるために、いってみれば惰性でオンライン麻雀をしているのではないでしょうか。「消音」にして「ずっと」しているところに、そのような感じが出ているように感じます。
夜、ネットの麻雀、そして消音の取り合わせがずっと継続しているところに雰囲気を感じる一首です。