ハンカチをかぶせるだけの子の手品われは見ており日曜の昼間に
松村正直『午前3時を過ぎて』
松村正直の第三歌集『午前3時を過ぎて』(2014年)に収められた一首です。
「ハンカチをかぶせるだけ」の手品とはいったいどのような手品でしょうか。
プロのマジシャンであれば、カードやコインあるいは指輪などにハンカチをかぶせて、不思議な現象を見せてくれることでしょう。
掲出歌はそのようなプロの技ではなく、「子」が見せてくれた手品なのです。何ともほほえましい一場面を想像します。ハンカチをかぶせたものは明確にされていませんが、ハンカチをかぶせるだけで手品になるというところに、親と子の関係性が垣間見えるようです。
しかも結句の「日曜の昼間に」という状況が、休日の穏やかな家族の場面を思わせて、より一層あたたかみを与えてくれる歌になっています。
技巧が難しければ難しいほどいい手品になるかといえば必ずしもそうではなく、たとえ技巧がなかったとしても、演じる側とそれを見る側との関係によっては、素晴らしい手品になることを教えてくれる一首だと感じます。
松村正直 – BOOTH
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