白鳥の首のカーヴのあの感じ、細い手すりに手を添えている
鈴木加成太『うすがみの銀河』
鈴木加成太の第一歌集『うすがみの銀河』(2022年)に収められた一首です。
この一首を読むと、「白鳥の首」と「細い手すり」とがイメージの中で重ね合わさり、どこかひんやりとした印象を受けます。
状況としては「細い手すりに手を添えている」が先にあって、その状態で「白鳥の首のカーヴ」を主体が思い浮かべている場面ではないでしょうか。
しかし面白いのは、「白鳥の首のカーヴ」がまず提示されることにより、順番としては「白鳥の首」から「細い手すり」が導き出されたような感じを受けてしまうところでしょう。
「あの感じ」といういい方も興味深く、主体はこれまで「白鳥の首」に手で触れたことがあり、その「カーヴ」の具合をとてもよく知っているかのような様子を想像させます。「あの感じ」には、”見て”知っているというよりも、”触れて”知っているといった感じがよく伝わってくるように思います。
この歌において、「手すり」に手を添えることは、すなわち「白鳥の首のカーヴ」に手を添えることにつながっています。それよりもむしろ「白鳥の首のカーヴ」への手の添え方をもって、「細い手すり」に手を添えているといった方がしっくりくるかもしれません。
「白鳥の首のカーヴ」と「細い手すり」のイメージが重ね合わさる歌ですが、それぞれが登場する順番によって、また「あの感じ」という表現によって、「白鳥の首のカーヴ」が生々しく触覚として立ち上がってくる一首だと感じ、印象に残ります。