丁寧に落ち葉を吸っていく機械が曲線の多いフォルムをしていた
鈴木ちはね『予言』
鈴木ちはねの第一歌集『予言』(2020年)に収められた一首です。
落ち葉を片づける場合、量にもよりますが、箒とちりとりでは大変なケースがあります。そのようなとき、落ち葉を吸ってくれる機械を使うのが効率的でしょう。ブロワバキュームなどといわれる機械ですが、街中で何度か目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
さて、掲出歌はその「落ち葉を吸っていく機械」について詠った歌ですが、落ち葉の吸い方や吸った後の状況に注目するよりも、「フォルム」に注目した点が特徴の歌でしょう。
機械の形状に注目し「曲線の多いフォルム」と捉えています。
曲線が多いと捉えたからといって、ではその発見が何かを意味しているのかといえば、この歌からは特に何かを意味しているようには感じられません。
強いていえば、「丁寧に」と「曲線が多い」を関連づけようと思えば関連づけることは可能かもしれませんが、これを関連づける明確な理由もありませんし、関連づけたところから歌の世界が格段に広がるような感じもあまりないため、ここは無理に関連づける必要はないのかと思います。
この歌から読み手が感じとることができるのは、主体が「丁寧に落ち葉を吸っていく」様子を見つめていたこと、そして落ち葉を吸う機械が「曲線の多いフォルム」であると気づいたこと、大きくはこの二点ではないでしょうか。
殊更、この歌が詠まれた背景や意味を追求するよりも、主体がそう感じたということを素直に受け入れることで、「曲線の多いフォルム」という部分の印象が大きくなって、だんだんとこちらに伝わってくるように感じます。
読み終えた後に残るのは「曲線の多いフォルム」という言葉であり、イメージであり、いうなれば「曲線の多いフォルム」に意識が集約されていくところが、この歌の読ませどころなのかもしれないと感じます。
「曲線の多いフォルム」が妙に心に残り続ける一首です。