アメリカの碁石は色が変えてあるアメリカ的な理由によって
松木秀『5メートルほどの果てしなさ』
松木秀の第一歌集『5メートルほどの果てしなさ』(2005年)に収められた一首です。
碁石は通常、黒と白の二色です。黒石は那智黒、白石は碁石蛤からつくられたものが最高級とされています。
この歌では、アメリカの碁石について詠っています。
下句の「アメリカ的な理由」とは一体どういった理由なのでしょうか。多民族国家であるアメリカにおいて、黒と白から思い浮かぶのが、黒人と白人という区分です。
黒人と白人の歴史においては人種差別の問題がありますが、碁石の黒と白という色分けはあまりにも黒人と白人という分け方を想像させます。それゆえに「アメリカ的な理由によって」碁石の色が違う色に変えられているということなのではないでしょうか。
ではどんな色に変えられたのでしょうか。
アメリカと色の連想としては、まず星条旗を想像します。赤、白、青がつかわれていますが、本来の碁石と異なる色ということであれば、ひょっとすると「赤」と「青」の碁石になったのかもしれません。
碁石の色に注目する歌は珍しいのかもしれません。この一首はアメリカを登場させて、碁石の色にフォーカスを当てています。
先ほど「アメリカ的な理由」の候補を述べましたが、理由は様々考えられるかもしれません。また何色に変わったのかも色々と想像できます。一首の中に情報が少ない分、読み手それぞれが想像しながら読むことができるところが、この一首の魅力のように感じます。