身の丈に合わない品はかなしむに足る身の丈に合わない品は
五島諭『緑の祠』
五島諭の第一歌集『緑の祠』(2013年)に収められた一首です。
「身の丈」という一連の中にある歌で、「八月、伯父が死んで、カヤの碁盤を相続した」という詞書が添えられています。
榧はイチイ科の常緑針葉高木で、碁盤づくりに適した木材です。直径1mほどの大きさになるには、300年以上の歳月を要するとされています。榧は木肌の美しさや香り、碁石を打った時の弾力など、碁盤や将棋盤の素材として非常に優れています。
この詞書からもわかる通り、掲出歌は、伯父の遺品にあった榧の碁盤を相続したことに関する一首です。
「身の丈に合わない品は」が一首の中に二度登場します。初句・二句と、四句後半・結句で繰り返され、ちょうど一首をサンドイッチするような配置で置かれているのです。つまり、大きく三つのパートから成ります。「身の丈に合わない品は」「かなしむに足る」「身の丈に合わない品は」です。最初と最後が同じフレーズなので、ブロックをAとBのように考えると、この歌はABAといった構成になっています。この構成が、読んだときのリズムや音のうえでも、視覚的な情報においても、とても印象深さを与えるものになっていると感じます。
さて、真ん中のブロックにある「かなしむ」ですが、ひらがなに開かれているので、「悲しむ」「哀しむ」「愛しむ」のいずれかでしょうし、あるいはいずれでもあるのでしょう。
「足る」の二音が四句頭にかかりますが、声に出して読めば、ここだけが妙に強調される印象があります。この強調に、身の丈に合わないものを相続したことに対する思いの強さが如実に表れているのではないでしょうか。とにかく「身の丈に合わない品」という部分が、深く伝わってくるのではないでしょうか。
もし詞書がなかったとしたら状況があまりにもつかめませんが、この歌の場合、状況は三十一音の中に入れるのではなく、詞書として外に出しています。その分、一首の中に状況説明のような箇所を設ける必要がなく、純粋に言葉のリフレインや音を意識した詠い方を味わえるようになっている一首なのだと感じます。

