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tankalife
短歌に興味を持ち始めて10年ほどになります。短歌の世界は実に魅力的です。短歌の奥深さをもっともっと知って発信していきたいです。

囲碁の歌 #2

囲碁の短歌

うたたねより覚めたるときにEテレに一局の碁は終はりてゐたり
小池光『思川の岸辺』

小池光の第九歌集『思川の岸辺』(2015年)に収められた一首です。

毎週日曜日、NHKのEテレ(かつてのNHK教育テレビ)で囲碁の対局が放送されています。これはNHK囲碁トーナメントと呼ばれる棋戦で、毎週一局を放送し、一年間かけてトーナメント方式で優勝者を決めていくものです。

放送時間は12:30~14:00。勝敗がつく時間帯ははその時々で変わりますが、早ければ13:30頃、遅ければ14:00直前というときもあります。

昼過ぎのこの時間帯は、昼食が終わって眠たくなる時間帯です。

掲出歌において、主体はうたたねをしたのでしょう。そのうたたねから覚めたときに対局が終わっていたという状況を詠んだ歌です。休日のありふれた日常の一場面を詠んだ一首であり、特別の出来事を詠んだ歌ではありません。場合によっては歌になりそうな起伏のある場面とも思えないのですが、そんな日常の場面がこのように詠われると、何かしら意味を探してしまいます。

寝ている間に、その途中経過がどうであったのかもわからないまま「一局の碁」が終わっていたという事実に、どこか儚さのようなものを感じます。人生は一局の勝負ごとに例えられることが多いですが、一局の勝負ごとがうたたねの間に終わってしまうというところに、人生を重ねて読んでしまうのです。

少し踏み込みすぎかもしれませんが、「邯鄲の夢」の故事を想起してしまいます。「邯鄲の夢」の故事ではわずかな時間の間に栄枯盛衰を経験する夢を見ますが、掲出歌では眠りのとき夢を見ていたかどうかはわかりません。ただ、覚めた瞬間の感触のようなものは「邯鄲の夢」の故事に通ずるものがあるのではないでしょうか。

詞書などなくとも「Eテレ」「碁」という短い言葉が歌の中に無理なく配置されることで、曜日・時間帯・場面を読み手に思い浮かべさせてしまうあたりはとても巧いと感じる一首です。

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