グーグルで徐庶を検索するたびにJOJOでは? と尋ねられるトラップ
しんくわ『しんくわ』
しんくわの第一歌集『しんくわ』(2016年)に収められた一首です。
歌集では、この歌は「赤壁」と題された一連に置かれており、三国志の登場人物に関する歌として見ていいでしょう。
「徐庶」とは、中国の三国時代の魏で活躍した軍師・武将の名前です。三国志において劉備や曹操、諸葛亮などは知っている人は多いかもしれませんが、徐庶の名を知っている主体はよほど三国志が好きか、読み込んでいるのだと思います。
余談ですが、昔ゲームでKOEIの三国志シリーズをやったことがありますが、徐庶の知力は割と高く設定されていたように記憶しています。
さて、主体は、何か徐庶のことについて調べたいことがあり、Googleで検索したのでしょう。そのときに、Googleから「徐庶」ではなく、「JOJO」ではありませんかとアドバイスを受けている場面です。
「JOJO」は、荒木飛呂彦のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』のジョジョのことでしょうか。徐庶とジョジョを比較した場合、Googleにとってはジョジョは既知の情報でも、徐庶は
“ジョショ”ではなく”ジョジョ”ではありませんか、間違って入力していませんかとGoogleから尋ねられているのです。しかし、それは主体にとっては「トラップ」なわけで、「徐庶」を調べたいことにかわりはないのです。Googleは親切心で、入力間違いの可能性を指摘してくれるわけですが、このときの主体の入力は間違いではなく、検索の目的は「徐庶」だったわけです。
この歌がつくられたのは2016年歌集発売以前ですから、かなり昔のGoogleの検索機能の場合についての結果です。ちなみに2025年12月現在、Googleで「徐庶」とだけ入力して検索した場合、「JOJOでは?」と尋ねられることはありません。しっかりと徐庶の情報が上位に表示されます。
Googleの親切心から出た「JOJOでは?」を主体は「トラップ」と捉えているわけですが、そこに検索結果を提供する側と、検索機能を利用する側の差が如実に表れており、また「徐庶」「JOJO」の具体的事例が相まって、とても興味深い一首になっているのではないでしょうか。



