観覧車の歌 #12

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観覧車の短歌

潮風とレモンドーナツ 観覧車で生まれた人はいるのだろうか
小俵鱚太『レテ/移動祝祭日』

小俵鱚太の第一歌集レテ/移動祝祭日(2024年)に収められた一首です。

観覧車のゴンドラ内で人が生まれたことがあるかという発想に至るところに驚かされます。

人が生まれる場面といえば、病院や自宅などが一般的に浮かびます。もちろん急に産気づき、病院まで間に合わず予想外の場所で生まれることはあるでしょう。

観覧車のゴンドラ内での出産が実際にあったのであれば、それは大変珍しいことでしょう。ここでは実際にそういう事実があったかどうかではなく、主体が「観覧車で生まれた人はいるのだろうか」と想像しているところがポイントでしょう。

初句二句は「潮風とレモンドーナツ」とあり、その後一字空けとなっています。「潮風とレモンドーナツ」と提示されることで、とても爽やかな雰囲気が醸し出されます。

ここで「観覧車で生まれた人はいるのだろうか」は何も深刻な問いではありません。それは「潮風とレモンドーナツ」がもたらす爽やかな雰囲気のため、そのように感じるのでしょう。

あまりにも爽やかすぎて、この問いかけも一瞬よぎったことであり、風に流れていくように、しばらくすれば問いを感じたことすら忘れてしまうような、そんな印象を受けます。

観覧車の大きさと、じっとそこに立つ動じない感じ、そして潮風とレモンドーナツの爽やかな様子がずっと残り続ける一首です。

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