赤は注意、緑は励まし 先端の欠けた三色ボールペンなら
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』
千葉聡の第五歌集『海、悲歌、夏の雫など』(2015年)に収められた一首です。
三色ボールペンといえば、「赤、青、黒」の組み合わせが一般的です。四色ボールペンになれば、これに「緑」を加えて「赤、青、黒、緑」の組み合わせがよく売られています。
掲出歌は、三色ボールペンですが、赤と緑が登場します。「赤、緑、青」や「赤、緑、黒」というのはあまり見かけないので、ひょっとすると一般の三色ボールペンの芯を入れ替えたものかもしれません。
歌集では掲出歌の一首前に〈「見てください」メモつき小論文(大量)国語表現の授業終えれば〉という歌があるので、添削やチェック、採点などをしている状況も想像できます。
「赤は注意」と「緑は励まし」が対になっていますが、赤と緑の補色の関係から「注意」と「励まし」の間の落差がよく表れていると思います。
「先端の欠けた」というのは一体どういうことでしょうか。使用頻度の高さから先端が欠けたことにより、もう一色の黒か青がうまく出せないのかもしれません。ですから、この歌では赤と緑の二色が登場し、補色の二色であることから、より一層色彩の効果が出ている一首といえるでしょう。
色の効果というのは、視覚でぱっと捉えることができますから、添削された側にしてみれば、赤と緑の色の比率で見た瞬間にその状況をつかむことができた、そのような場面まで想像の膨らむ歌ではないでしょうか。