草笛を青年僧が鳴らしをり紅き法衣のまま寝ころびて
光森裕樹『鈴を産むひばり』
光森裕樹の第一歌集『鈴を産むひばり』(2010年)に収められた一首です。
「雷龍に乗る」という一連の中の歌ですが、「雷龍」の国とはブータン王国を指します。ブータン王国を訪れた際の情景を詠んだ歌です。
草笛を青年僧が鳴らしているのですが、寝転んで鳴らしているのです。しかも紅い法衣を纏ったまま。
草笛の緑色を意識の片隅に置きながら読み進むと法衣の紅色が現れるため、この法衣の紅色がとても鮮やかに感じられます。同時に法衣の紅色が登場することで、一方の草笛の緑色がより一層際立ってイメージされます。
青年層の背格好や顔つきなどは言及されていませんが、「紅き法衣」をまとったまま寝転んでいる、そして「草笛」を鳴らしているという補色の構図が視覚に訴えてくる一首だと感じます。