畑道のトマトの膚は日を浴びてみどりと赤のまじり合うころ
吉川宏志『鳥の見しもの』
吉川宏志の第七歌集『鳥の見しもの』(2016年)に収められた一首です。
畑道とは、畑の間を通っている道、または畑の傍を通っている道を指す言葉です。
畑道にいくつかトマトが生っているのを見たのでしょうが、「みどり」のトマトもあれば、「赤」のトマトもあり、一個のトマトにおいても、みどりと赤の色が混じり合っていたものもあったのでしょう。
掲出歌が収められた一連からは、梅雨の時期が窺われますが、この時期をトマトの熟し具合によって表現しているところがとても魅力的だと思います。
「トマトの膚」という表現も、トマトの表面を丁寧で具体的に表していて巧いと感じます。
全部が「みどり」ではなく、また全部が「赤」ではなく、その中間であるところに、視覚的効果が表現された一首ではないでしょうか。