コーヒーの歌 #9

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コーヒーの短歌

欠けたままのコーヒーカップに息づいた記憶たどれば新緑のころ
田中ましろ『かたすみさがし』

田中ましろの第一歌集かたすみさがし(2013年)に収められた一首です。

欠けたコーヒーカップが捨てられずに、ここにあります。そのコーヒーカップとともに過ごした時間を遡っていくと「新緑のころ」にたどり着いたと詠われています。

喪失と思い出の重なり合うような一首です。

コーヒーカップはなぜ欠けたのでしょうか。理由は明らかにされていませんが、欠けたことさえも思い出の一部となっているのでしょう。

「息づいた」という表現から、主体にとって「記憶」は無味乾燥な記憶ではなく、生き生きとしたままの「記憶」なのだと思います。それは忘れたくても忘れがたい記憶であり、その記憶から呼び起こされる情景は「新緑のころ」の出来事なのです。

新緑という季節のあたたかで、穏やかで、心地よい様子を思い浮かべることができます。新緑に対する思いは、この記憶にもそっくり当てはまり、この記憶はきっとあたたかで心地よいものだったのでしょう。

コーヒーカップひとつから新緑の過去へ遡っていく時間逆行の経過が、読み手にも同様の遡りを感じさせてくれる歌だと思います。

コーヒーカップがなければ、それも欠けたままのコーヒーカップがなければ、思い出すことすらできなかった「新緑のころ」なのかもしれません。それゆえに、コーヒーカップからたどり着いた「新緑のころ」は、とても貴重で美しいものなのだろうと想像させてくれる一首なのではないでしょうか。

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