コーヒーの歌 #6

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コーヒーの短歌

無糖ブラック胃に広げつつ風強き明けの船出を諦めにけり
黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』

黒瀬珂瀾の第四歌集ひかりの針がうたふ(2021年)に収められた一首です。

海洋調査を行っていた著者は、何度も船で海に出ることがあったのでしょう。

船出は天候や海の様子に左右されるものです。天候が悪ければ船を出せない場合があり、毎回毎回決まった時間に船出ができるというものでもありません。

この日も風が強いため、船出を諦めた場面が詠われています。

船出を諦めた心境が「無糖ブラック」の苦味と響き合います。また「胃に広げつつ」という丁寧な描写により、ブラックコーヒーが染みわたっていくさまが諦めの感じをよく表していると感じます。

ここで初句の「無糖ブラック」という言葉に注目しておきたいと思います。

元々ブラックコーヒーとはコーヒーに砂糖やミルクを入れない飲み方を指すため、あえて「無糖」をつけなくても砂糖なしであることはわかります。ではなぜあえて「無糖」と冠したのでしょうか。

これはカップで飲むコーヒーではなく、缶コーヒーを指しているのかもしれません。缶コーヒーは、100mlあたりに含まれる糖類が0.5g未満の場合に「無糖」と表示が可能です。ブラック無糖や無糖ブラックなどと呼ばれている缶コーヒーもあります。

缶コーヒーにおける「無糖」の場合、若干糖類が含まれている可能性もありますが、ただの「ブラック」よりも「無糖ブラック」の方が無糖が強調され、より何も入っていない感じを受けるから不思議です。

初句で「無糖ブラック」といいきったところが、諦念感を増幅させていると感じる一首です。

ブラックコーヒー
ブラックコーヒー

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