コーヒーの歌 #18

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コーヒーの短歌

ストローをせり上がりくるコーヒーの見えざる黒きストローなれば
染野太朗『初恋』

染野太朗の第三歌集初恋(2023年)に収められた一首です。

ストローを使って飲んでいるところから想像すると、アイスコーヒーでしょうか。

ストローは白ではなく黒いストローであるところが、この歌のポイントでしょう。

グラスにコーヒーが入っていて、そのコーヒーがストローを伝って口の中に到達するわけですが、黒いストローであるがゆえ、グラスに入ったコーヒーは目に見えても、その後のコーヒーの行方は目に見えない状態となっているのです。

自らの口でコーヒーを吸い上げるので、コーヒーが大体ストローのどのあたりまで来ているかというのは感覚としてわかります。しかし、ストローの中をせり上がってくる液体は、本当にコーヒーなのでしょうか。

グラスに入ったコーヒーを吸い上げているので、吸い上げる前の液体がコーヒーであることは間違いないようですが、黒いストローの中は目に見えないため、それがせり上がってきている途中の液体が、コーヒーであるといい切ることは本当にできるのでしょうか。

おそらくこの歌に出会わなければ、そんなことを考えることもなく、白いストローで飲もうが、黒いストローで飲もうが、コーヒーを飲んでいるということを疑うことはまずないでしょう。

しかし、改めて掲出歌のように「コーヒーの見えざる」「黒きストローなれば」といわれると、ストローをせり上がる液体に疑いが生じてしまいます。

人は何をもって、コーヒーをコーヒーとして認識しているのでしょうか。

ストローの中を通る液体が本当にコーヒーであるのか、そんな当たり前のことが当たり前ではないのではないか、日常の一場面においてそんなことを考えさせられる一首ではないでしょうか。

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