コーヒーの歌 #1

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コーヒーの短歌

これでいいんだ ブラックコーヒー飲んだあと歯磨いたらいい味がした
山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』

山田航の第三歌集寂しさでしか殺せない最強のうさぎ(2022年)に収められた一首です。

歯を磨く直前に食べたり飲んだりするものは、時と場合によってさまざまではないでしょうか。

歯磨きの前に食べることを嫌う人もいるかもしれません。また水やお茶以外のものを飲んですぐ歯磨きすることを嫌がる人もいるのではないでしょうか。

この歌では「ブラックコーヒー」を飲んだあとに歯磨きをしたときを詠っています。ブラックコーヒーを飲んで歯を磨いたら「いい味」がしたというのです。

「ブラックコーヒー」というのがポイントなのでしょう。砂糖やミルクの入ったコーヒーでは甘さが残り「いい味」につながらないかもしれません。ブラックコーヒーだからこそ、飲んだ後の歯磨きで「いい味」につながったのかもしれないと読んでいて何となく納得してしまいます。

初句の「これでいいんだ」というのは、心からの肯定というのではなく、どちらかといえば諦念のような発言だと感じます。現状に対してどこかしかたがない部分があるのだけれど、それがブラックコーヒーの苦みと呼応するようです。

しかし、そのブラックコーヒーを飲んだ後の歯磨きで「いい味」が登場し、この一首を読み終えたときの読後感はどことなく心地いいものを感じます。

ブラックコーヒーと歯磨きという、変わった組み合わせを詠っていますが、諦念から肯定へと至る過程を、ブラックコーヒーがいい味を出しながら介在している一首だと思います。

ブラックコーヒー
ブラックコーヒー

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