学年の会議でもらったチョコレートぼんやり溶けて夏は近づく
千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』
千葉聡の第五歌集『海、悲歌、夏の雫など』(2015年)に収められた一首です。
高校教諭である著者ですが、学年の会議でチョコレートについて詠っています。
会議の際にもらったチョコレートをすぐに食べずに、机の引き出しかどこかにしまっておいたのではないでしょうか。
もらいものというのは、すぐ消費する場合と何となく放っておいてしまうという場合がありますが、放っておいてしまったということは多くの人が経験しているのではないでしょうか。
季節はやがて夏に近づき、日中の気温もだんだん高くなってくる頃となりました。食べずにしまっておいたチョコレートは高い気温によって「ぼんやり溶けて」いってしまったのです。
夏が近づいたからぼんやり溶けたのか、ぼんやり溶けたから夏が近づいたのか、このあたりは表裏一体のようですが、チョコレートが溶けていくさまを「ぼんやり」と表現したところがとても巧いと思います。
夏が近づくさまが、チョコレートという具体物によって時間経過を感じさせながら読み手に伝わってきます。
このチョコレートはおそらくその後も食べられることなく、本格的な夏が近づいたのではないかと想像します。