チョコレイト眠る冷蔵庫の中に贖罪のように白い牛乳
鈴木晴香『心がめあて』
鈴木晴香の第二歌集『心がめあて』(2021年)に収められた一首です。
チョコレートの保存場所として、冷蔵庫が使われることが多いのではないでしょうか。特に気温が高い時期では、溶けてしまわないように冷蔵庫が適した保存場所として活躍します。
この歌では、まずチョコレートが保存されている冷蔵庫が登場します。冷蔵庫の中にあるのは、食べかけのチョコレートかもしれませんし、まだ封が切られていないチョコレートかもしれません。
「眠る」という表現に、チョコレートがそこにじっとしてあるという静的なものを感じます。
そして下句では「贖罪のように白い牛乳」と詠われています。純白という言葉がありますが、「白」はとてもクリーンなイメージがあり、「贖罪」という言葉にぴったりの色のように思います。
しかしなぜここで「贖罪」が出てくるのでしょうか。何に対しての「贖罪」なのでしょうか。このあたりは明確ではありませんが、「白い」という部分の強調として「贖罪」が表れているようです。
また「贖罪のように白い牛乳」が表れるのは、ただの冷蔵庫ではなく「チョコレイト眠る冷蔵庫」であるところもポイントになっているでしょう。
ここでは「チョコレイト」が「贖罪」の対極に位置するものとして描かれているのかもしれません。この歌ではどちらかといえば「白い牛乳」に焦点が当たっていますが、初句の「チョコレイト」があるからこそ、この歌が成立しているのだと思います。