チョコレートの歌 #10

チョコレートの短歌

経理部の声の小さい前田さんキットカットを垂直に割る
上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』

上坂あゆ美の第一歌集老人ホームで死ぬほどモテたい(2022年)に収められた一首です。

「キットカット(KITKAT)」はネスレから発売されているチョコレート菓子で、赤いパッケージが印象的です。

キットカットは二本のバーがくっついたような形状をしていますが、それを割ろうとするとき、きれいに割れない経験をした人も多いのではないでしょうか。端が斜めになって割れたり、一部が粉々になったりすることもあります。

掲出歌では、経理部の前田さんがキットカットを垂直に割る状況が詠われています。ただ前田さんが垂直に割るのは今回だけのことではなく、継続反復して、毎回毎回キットカットは垂直に割っているのではないかと感じます。

つまり、経理部の前田さんはキットカットを垂直に割る人のイメージで捉えられているのです。

「声の小さい」という詳細もリアリティを感じます。経理という業務の性質上、黙々とパソコンや電卓に向かうイメージがありますが、声が小さいというのも経理部と響き合っていると思います。

主体にとって、前田さんの特徴は「キットカットを垂直に割る」人であるという点にあるでしょう。性質や性格、特徴、見た目など数多あるポイントの中で、「キットカットを垂直に割る」という瑣末な点がクロースアップされているところに面白さを感じます。

それは、前田さんの面白さというよりも、主体が前田さんを見つめる独特の視線の面白さといったものでしょう。前田さんを通して、主体の存在が妙に立ちあがってくるところにこの一首の魅力があるように思います。

チョコレートバー
チョコレートバー

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