空白の歌 #8

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空白の短歌

職歴に空白はあり空白を縮めて書けばいなくなるひと
虫武一俊『羽虫群』

虫武一俊の第一歌集羽虫群(2016年)に収められた一首です。

面接を受ける場合、大抵は履歴書の提出が求められます。履歴書には氏名や住所などの基本情報のほかに、学歴および職歴を記載する欄が設けられているでしょう。あるいは罫線のみが書かれている枠があり、自ら「学歴」「職歴」と語を書いて、その下に履歴を書いていくタイプのものもあります。

掲出歌では、「職歴に空白はあり」と詠われています。一度も働いたことがなく職歴がないか、あるいは転職した過去があるのだけれど、その職と職の間の空白期間がとても長いか、この空白にはそのようなことが考えられます。

職歴は通常、年月単位で書いていくので、入職で一行、退職で一行と記載していきますが、職歴が多い場合は行数が多くなりますし、少ない場合は行数が少なくなります。

「空白を縮めて書けばいなくなるひと」とあり、主体の職歴はほとんど書くことがないのだと思います。いや、全く歴がないのかもしれません。「いなくなるひと」という表現が面白いと思いますが、面接において重要視される項目のひとつである職歴が全くない、あるいは特筆すべき職歴がないということは、面接を受けようとしている主体の存在自体がないということとほぼ同義であるということを、この歌はいっているのではないでしょうか。

職歴だけがその人の人生ではないはずですが、履歴書という世界においては、職歴の有無はその人の存在の有無と限りなく近いものであることが、履歴書という具体的なものを通して詠われています。

「空白」にこそ、その人のもつ独特の人生が表れるようにも思いますが、人事や採用ということを考えた場合、その「空白」は無視されてしまう、そんなことを考えさせられる一首です。

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