陽だまりにとめどない黄よ落葉はまた逢うための空白に降る
江戸雪『声を聞きたい』
江戸雪の第五歌集『声を聞きたい』(2014年)に収められた一首です。
一読とても美しい歌だと感じます。
「陽だまり」「とめどない」「落葉」「また逢う」「空白」「降る」と、道具立てが揃いすぎているといえば揃いすぎているように思いますが、ドラマティックなワンシーンを見ているような映像的な歌ではないでしょうか。
黄色の落葉はイチョウかもしれません。「とめどない」から量と頻度の甚だしさを感じますし、繰り返される落葉のイメージが浮かんできます。また「黄」は「陽だまり」と合わさり、光のイメージをつれてきます。
そして「落葉」はただ葉が落ちるのではありません。まるで自ら意思をもっているかのように「降る」のです。落ちるのではなく降るところに、何かしらの力が働いているようにも感じます。
落葉の一般的なイメージは寂しさや終焉を思わせるところがありますが、この歌も例外ではないでしょう。「また逢うための」とは、いいかえれば一旦別れがあるということです。
しかし「また逢うための空白」という表現からは、寂しさというよりもむしろ希望の感情を感じとってしまいます。さきほど、光のイメージがあると述べましたが、歌全体としては寂しさ、別れ、終焉というものを抱えながらも、今後上昇カーブを描くような期待を下句に感じる一首となっています。
それは「黄」という色の明るさによるところも大きいのでしょう。
「また逢うための空白」に降る黄が、とても鮮やかに眼前に広がっていき、その光景がずっと続いていくような印象のある魅力的な一首だと感じます。