自転車の歌 #8

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自転車の短歌

自転車の重さも軽さも楽しくて半月のような町をゆくのさ
雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』

雪舟えまの第二歌集はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで(2018年)に収められた一首です。

この歌を読むと、重さや軽さを心から楽しんでいる主体像が立ちあがってきます。

物の質量だけを考えたとき、「重さ」と「軽さ」が共存する状況というのはないように思いますが、そのときどきの気分や漕いでいる状態を加味すれば、自転車ひとつに「重さ」と「軽さ」の両方を感じることができるでしょう。

たとえば上り坂と下り坂でペダルを漕ぐ力は変わってきますが、それを重い、軽いと表現することは可能ですし、そのような場面を指しているのかもしれません。しかし、この歌からはそのような現実的な状態の入れ替わりというよりは、むしろ自転車そのものが重く感じたり、軽く感じたりするといったふうにストレートに捉えたほうがいいように感じます。

それは自転車に乗っているときの感情が、まるで波のように入れ替わるような感じを想像しました。そして、その感情が振幅が自転車の重さと軽さにつながっており、両方を楽しんでいる状態なのではないでしょうか。

下句の「半月のような町」は、地球の半球のかたちを捉えたスケールの大きな表現かと思います。円弧をもつ町をスケール大きく表現したところが、上句の自転車の重さと軽さの両方を楽しむ感情の支えになっているように感じます。

結句「ゆくのさ」といういいかたも素敵です。この歌からは、マイナスの感情は一切感じることはなく、本当に楽しさとワクワク感だけが伝わってくるような歌です。

読んでいて心がうれしくなる一首ではないでしょうか。

自転車
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