問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈わいわいときのこ煮えゆくきのこ鍋 家族はそこの【 ① 】である〉 (小島ゆかり)
A. 観客
B. 静寂
C. 暗がり
D. 連なり
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解答 – Answer
C. 暗がり
解説
わいわいときのこ煮えゆくきのこ鍋 家族はそこの暗がりである
掲出歌は、小島ゆかりの第五歌集『希望』の一連「きのこ」に収められた一首です。
季節は秋でしょうか。鍋の中でさまざまなきのこが煮えている様子が「わいわい」という擬態語によって、より一層楽しそうに感じられます。
しかし、一転して下句は「家族はそこの暗がりである」とあり、わいわい感はありません。
「そこ」とはどこを指すのでしょう。
きのこ鍋が主役で、家族はそれを引き立たせる背景のような存在であるということでしょうか。ここでいう「暗がり」は、きのこ鍋を明とした場合、家族を暗とするというような意味での暗がりを指しているようでもありながら、どうもそれだけではないように感じます。
きのこ鍋を明として、家族も明とすればいいのですが、そうではないところに、家族関係の微妙な翳りのようなものが感じられないでしょうか。
きのこ鍋を家族は取り囲んでいるのでしょうが、この家族の存在の在り様に不気味さのようなものを感じます。
そう考えると上句の「わいわい」も、純粋な楽しさを表している語というよりも、むしろごちゃごちゃとしたような、影を背負った「わいわい」のようにも思われます。
すっきりとした読みができていませんが、きのこ鍋と家族の暗がりとの対比が印象に残り、何とも心に引っかかる一首です。
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