次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】のような素足が自転車を漕いで視界をながれて行った〉
A. 真鍮
B. かがり火
C. レース紙
D. シャーベット
答えを表示する
D. シャーベット
シャーベットのような素足が自転車を漕いで視界をながれて行った
掲出歌は、中沢直人の第一歌集『極圏の光』の一連「西風の見たもの」に収められた一首です。
誰か他者が自転車を漕いでいる場面を捉えた歌だと思います。
自分の視界を自転車に乗った誰かがすっと過ぎていったところでしょうが、その視界に残っているのはその人そのものではなく「素足」だけがクロースアップされているようです。
その素足は「シャーベットのような素足」と表現されていますが、この比喩がこの歌を特徴づけていると思いますし、この喩えに惹かれます。
しかし「シャーベットのような素足」というのは一体どのような素足なのでしょうか。
感覚的にわかるような、わからないような、とにかく今まで見たことのない独特の喩えだと感じます。シャーベットから連想するに、さわやかさ、混じり気のない感じ、冷たさ、涼しさ、固さ、色合いなどさまざまなイメージが浮かんできます。
シャーベットのすっきりとした後味のよさも、視界をすっとながれていった様子に通じるのかもしれません。
音の面に注目すると「シャーベット」「素足」「自転車」「視界」という言葉の子音には、S音が含まれており、さわやかで清々しいイメージを際立たせているように感じます。
「視界をながれて行った」という部分も何気なく詠われていますが、とても巧みな表現だと思います。
はっきりと固定的な素足をイメージすることができるわけではありませんが、「シャーベットのような素足」という比喩が、捉えにくいながらも妙に気になる表現で、何度も読み返してしまう一首です。