問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈やり残したことを思ってみぞおちに【 ① 】がこぼれる夕べ〉 (鯨井可菜子)
A. 月のひかり
B. レモンジュース
C. 甘納豆
D. 木香薔薇
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解答 – Answer
C. 甘納豆
解説
やり残したことを思ってみぞおちに甘納豆がこぼれる夕べ
掲出歌は、鯨井可菜子の第二歌集『アップライト』の連作「ペンだこ」に収められた一首です。
甘納豆がぽろぽろと鳩尾のあたりにこぼれる場面を詠っていますが、初句二句の「やり残したことを思って」という部分が、この歌に深さを与えています。
「やり残した」ということは、本来であればやりたかったということの裏返しであり、後悔に近い思いが少なからずあるでしょう。
この歌の前二首には次の歌が置かれています。
むきだしの求肥のこころ崖っぷちの三十七歳面談で泣く
異動になり寂しいですと一回くらい言えばよかった嘘でいいから
仕事での場面でしょう。異動となったがために、やり残したことが生まれてしまったのです。しかし今となっては、そのやり残したことをやり遂げることは難しい状況となってしまいました。
甘納豆がこぼれる様子が、やり残したことへの思いを馳せるさまをとてもよく表していると思います。こぼれてしまった甘納豆をこぼす前には戻せないように、やり残したことをやり遂げることはもうできないのかもしれません。
甘納豆という具体物によって、主体の思いを表した印象深い一首です。