問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈生後間もない【 ① 】の放し飼いをしていますが動きませんよほとんど〉 (小坂井大輔)
A. 愛
B. 木魚
C. 天邪鬼
D. 春
答えを表示する
解答 – Answer
B. 木魚
解説
生後間もない木魚の放し飼いをしていますが動きませんよほとんど
掲出歌は、小坂井大輔の第一歌集『平和園に帰ろうよ』の連作「全身が恥部」に収められた一首です。
一読、奇妙な歌だと思います。
「生後間もない木魚」とは、つくられてから間もない木魚ということでしょう。
一般的に考えれば、木魚は動きませんし、置いておくものですから、紐をつけたり、網で囲ったりするものではありません。しかし、ここでは木魚を魚のように捉え「放し飼い」という表現を用いることで、独特の雰囲気を醸し出しているのです。
このように一旦ファンタジーのような世界へ誘い、木魚に動きを与えたのに、すぐまたその後に「動きませんよほとんど」とあり、再び一般的な木魚の見方へ引き戻してくるところが何とも不思議なところです。
この一首でいおうとしていることは一体何なのでしょうか。どういう意図でこの歌がつくられたのでしょうか。冒頭で「奇妙な歌」と述べたのは、それらがつかみにくいためです。
しかし、「生後間もない」「動きませんよほとんど」のような表現のあたりに手触りが感じられ、なぜか惹きつけられる歌なのです。
つぶやきのようでもあり、いい切りのようでもあり、そのような曖昧さも含めて、忘れられない印象を残してくれる一首だと感じます。