いい女、されどメアドのakachan-minagoroshi@に警戒してる西麻布の夜
笹公人『念力ろまん』
笹公人の第四歌集『念力ろまん』(2015年)に収められた一首です。
東京・西麻布の夜に「いい女」と知り合ったときのことを詠んだ歌だと想像します。コンパかもしれませんし、飲み屋やクラブなどの夜のお店での場面かもしれません。
お互いの距離が少し縮まり、連絡先を交換しようとなったと思われます。
さて相手の連絡先であるメールアドレスを見てみると、なんと「akachan-minagoroshi@」であったのです。
メールアドレスはどのようにもつけられますが、忘れないようにイニシャルや誕生日などで構成する場合や、まったく関係のない文字の羅列で構成する場合など人によってさまざまです。
この歌におけるメールアドレス「akachan-minagoroshi@」はあまりにも意味を持ちすぎています。しかも、いい方向のつけ方ではないでしょう。
ですから、せっかく連絡先を交換するまでの関係になったのに警戒しているわけです。このメールアドレスを知るまでは「いい女」であったのでしょう。いや、メールアドレスを知ってからも「いい女」のままかもしれません。しかし、メールアドレスを知る前と知った後の「いい女」は同じ「いい女」ではないでしょう。
相手に無関心であれば、警戒することもないでしょう。関心があるからこそ、警戒するのではないでしょうか。
「警戒してる」とはいえ、この後、相手との関係はどのようになっていくのでしょうか。引くのか、進むのか、そのあたりも自由に想像でき、この後の展開への想像をふくらませてくれる一首になっていると感じます。