〈軽音部は廃部になってマーシャルはいま校長の訓話を鳴らす〉という巻頭歌で始まる、山田航の第三歌集は何?
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『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』
『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』は2022年(令和4年)に出版された、山田航の第三歌集です。2012年(平成24年)から2021年(令和3年)までの作品が収録されています。
仮名遣いについて、本歌集から新かなへ移行しています。ただし、第4章のみ旧かなが採用されています。
コミュニケーションについての歌集をつくろう、と思って編んだ第3歌集です。その結果、恋愛の歌が増えました。
あとがき
あとがきにある通り、自分だけで完結する歌ではなく、恋愛にしろそうでない場面にしろ、他者の存在を感じる歌、そして他者との関係性が表れた歌が多く見られると思います。
ここでいう他者は恋愛の対象でもあるでしょうし、人間以外の物も他者に含まれるでしょう。
そして、日常のふとした場面を鋭い切り口で捉えた歌にハッとさせられるものが多く感じます。
著者は『ことばおてだまジャグリング』(2016年)という本を出していますが、言葉そのものを楽しんだり、実際に言葉そのものの楽しさを伝えてくれる作品をつくっています。本歌集においても、言葉の楽しさを教えてくれる歌がいくつか見られ、読んでいて楽しくなります。
著者の場合、出来事から短歌が生まれるというよりも、言葉から発して一首ができあがるというつくり方ではないでしょうか。
言葉そのものの力やリズム、韻、楽しさなどが詰め込まれた一冊だと感じます。
『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』から五首
この街の自傷のように誰もいない公園に噴水があがるよ
さあどうか空の上から見ててくれフタアシケナシザルの歩みを
きれいごとたわごとうわごとえそらごとまるごと君のなら聴きたいよ
電線で切り刻まれた三日月のひかりが僕をずたずたに照らす
花びらは流れフロントガラスへと貼りついてみなそのまま走る