問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈マフラーに【 ① 】がこもっていくように生ぬるかった雨の地下鉄〉 (山崎聡子)
A. 微熱
B. 時間
C. 唾液
D. タルト
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解答 – Answer
C. 唾液
解説
マフラーに唾液がこもっていくように生ぬるかった雨の地下鉄
掲出歌は、山崎聡子の第二歌集『青い舌』の連作「遮断機と鳥」に収められた一首です。
雨の日のじめじめとした空気感は誰しも感じたことがあるのではないでしょうか。
掲出歌の場所は、そんな雨の日の「地下鉄」です。地下であることから、より一層生ぬるさを感じてしまうようでもあります。
そのような生ぬるさの比喩として「マフラーに唾液がこもっていくように」と表現されています。この表現がとても魅力的であり、オリジナリティのある比喩だと思います。
マフラーをしている季節、そしてこもるのは息ではなく「唾液」なのです。口の近くに巻かれたマフラーに吐く息は、繰り返し吐かれるうちに息のみならず唾液そのものがこもっていくという感覚が、生々しさを伴って伝わってきます。そしてその様子と雨の地下鉄の生ぬるさとが紐づけられ、一首全体が体温をもった歌になっていると思います。
ここで伝わってくる生ぬるさは心地いいものとはいえませんが、触感のある歌という意味においては非常に高い伝達度をもった歌であり、その生々しさはこの歌の前で読み手を立ち止まらせてしまうほどの実感をもった一首だと感じます。