問題 – Question
〈春眠より覚めるわたしはチョコレートのカシュウナッツのように曲がって〉という巻頭歌で始まる、杉﨑恒夫の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『パン屋のパンセ』
解説
『パン屋のパンセ』は2010年(平成22年)に出版された、杉﨑恒夫の第二歌集です。
70代、80代に詠まれた歌の中から、かばんの会のメンバーが選歌を行い、編まれた一冊です。
本歌集の歌について感じるのは、柔らかさややさしさの眼差しです。著者の心の中まではわかりませんが、詠まれた短歌にはあたたかさを感じます。
言葉の運びも韻律も表記も堅苦しくありません。空や宇宙といった題材も多く詠まれていますが、発想の範囲が広大なのだと思います。身近なものから大きな世界へつながるような歌が印象的で、何よりも読んでいて心地よさを感じます。
短歌を読んでいて心地いいというのは、読み手にとってとてもうれしいものです。つらく悲しい感情を詠うということも短歌のひとつの側面ではありますが、それだけが短歌のすべてではなく、心地よさを感じる短歌というものは歌を読む喜びを与えてくれます。
純粋に何度も読みたくなるという歌が集まった一冊といえるでしょう。今なお人気があり、刷数を重ねて売れ続けている歌集です。
『パン屋のパンセ』から五首
ゆっくりと桜を越ゆる風船に等身大の自由あるなり
休日のしずかな窓に浮き雲のピザがいちまい配達される
バゲットを一本抱いて帰るみちバゲットはほとんど祈りにちかい
晴れ上がる銀河宇宙のさびしさはたましいを掛けておく釘がない
この街の黄色い点字ブロックを辿っていったら夕焼けだった