次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈外に降る雪の様子はみてるからあなたは【 ① 】の様子をみてて〉 (岡本真帆)
A. 闇
B. 鍋
C. 兄
D. 風
B. 鍋
外に降る雪の様子はみてるからあなたは鍋の様子をみてて
掲出歌は、岡本真帆の第一歌集『水上バス浅草行き』の連作「ぱちん」に収められた一首です。
季節は冬、外には雪が降っています。「雪の様子」を見る状況とはどのようなときが考えられるでしょうか。
例えば大雪で、終始雪の状況を把握しておかないといけない場合が考えられます。場面が家の中であれば、大雪が家に影響を及ぼすときが想定されます。あるいはレストランにいるのであれば、雪の影響で交通手段が滞ってしまう可能性があるので、その状況を確認しているとも想像できます。
しかしこの歌は大雪のような深刻な状況を詠っているのとは少し違うように感じます。切羽詰まった状況というよりも、ありふれた冬の日常の一場面として「外に降る雪の様子」を見ることが自分の役割であると主張しているかのような印象を受けます。それに対応する行為として「あなたは鍋の様子をみてて」がある、そんな感じを受けるのです。
一般的には雪の様子を見る行為と鍋の様子を見る行為は、次元が違うというか本来比べられない別ものの行為として考えてしまうものです。しかし掲出歌では、この二つの行為が同列に提示されているのです。雪の様子を見ることと、鍋の様子を見ることが同じレベルの行為として語られているところ、そしてその行為をそれぞれ役割分担しているところ、そこにこの歌の面白さが表れているのだと思います。
私は鍋ができあがるのを外を眺めて待っているから、鍋奉行はお願いねといったようにも見ることが可能な一首です。下句のいい放っているところに主導権を握っているような感じを見出すこともできます。自分と相手との関係性が浮かび上がってくるようです。
具体的状況がないだけに読み手にとってさまざまに捉えられると思いますが、そこもまたこの一首がもつ歌の大きさであり、何とも惹かれる一首だと感じます。