問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈つかれたる【 ① 】にしづかにこほろぎのねのひびくなり独りねの夜〉 (前田夕暮)
A. 脳
B. 耳
C. 爪
D. 皮膚
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解答 – Answer
D. 皮膚
解説
つかれたる皮膚にしづかにこほろぎのねのひびくなり独りねの夜
掲出歌は、前田夕暮の第一歌集『収穫』上巻に収められた一首です。
この歌は、恋しい人と別れてひとりでいる夜の場面を詠っています。
そのような夜に蟋蟀の鳴く音が響いてくるというのですが、通常音は頭に響くか、耳に響くかという感じ方をすると思います。
しかしここでは「つかれたる皮膚」に響くと詠われており、音が皮膚に響くとしたところがこの歌の特徴です。ひとりであるからこそ、触覚、肌感覚の敏感さがより一層感じられ、思考や論理ではなく、体感として蟋蟀の音の響きを感じている様子がありありと浮かんできます。
静かな秋の夜において、ひとり寝をする寂しげな感情が皮膚の存在感を通して感じられる一首ではないでしょうか。