問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈病室の【 ① 】しばらく見てをれば短い衣装の天使現はる〉 (河野裕子)
A. カーテン
B. テレビ
C. 窓辺
D. 手すり
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解答 – Answer
A. カーテン
解説
病室のカーテンしばらく見てをれば短い衣装の天使現はる
掲出歌は、河野裕子の遺歌集『蟬声』の連作「短い衣装の天使」に収められた一首です。
「天使」が現れる瞬間とはどんなときでしょう。幸運なときでしょうか、それとも不運なときでしょうか。
この歌は作者が入院しているときの状況を詠った歌です。「病室のカーテン」を見ていると、天使が現れたというのです。天使は服を着ていないか、大抵短い衣装のイメージがありますが、ここでは「短い衣装の天使」と天使の姿かたちをいいきっています。
このようにいわれると「短い衣装」であることが何やら意味を帯びてきます。衣装にのみ言及したことで、現れた天使はいかようにも想像できます。短い衣装の天使の登場は幸運の証なのでしょうか。天使が現れるというのはそれだけで楽しいことのようにも思いますが、そのあたりは読者がどう捉えるのか、想像の余地が残されているように感じます。
カーテンを見ていることにより天使が現れたという出来事は、病室という限られた空間、しかも自分の住まいとは違い不慣れな空間におけるささやかな刺激であることは間違いないでしょう。
果たしてこの天使の表情は笑っていたのでしょうか、それとも無表情だったのでしょうか。どのような表情をして登場したのか、それを想像する楽しみを湛えた一首です。