問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈暗闇を【 ① 】の河が流れいて病むみどりごとわれをへだつる〉 (伊藤一彦)
A. 時間
B. 記憶
C. 呼吸
D. 言葉
答えを表示する
解答 – Answer
D. 言葉
解説
暗闇を言葉の河が流れいて病むみどりごとわれをへだつる
掲出歌は、伊藤一彦の第二歌集『月語抄』の連作「明滅」に収められた一首です。
暗闇に病気の嬰児が眠っている状況でしょうか。
成長した大人と嬰児とを隔てるものはさまざまあるでしょうが、ここでは「言葉の河」が登場します。主体と嬰児がもつ言葉は同じではありません。主体は当たり前のように言葉を扱いますが、嬰児は、一般的にいう「言葉」をまだ使いこなすこともできないでしょう。
そのような言葉に関する非対称性である状況を「言葉の河」と捉えたところに、簡単には埋められない溝のようなものを感じます。
主体はどちらかといえば「病むみどりご」に寄り添いたいのかもしれません。しかし、寄り添おうとするけれども、言葉の河という存在が隔たりを強くしているのです。まして暗闇です。その河の存在はとてつもなく大きく、ちょっとそっとでは越えられない、そんな隔たりを感じさせる一首です。