次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈月のない明るい夜に道ばたで、【 ① 】を、手渡される〉 (永井祐)
A. 麻雀パイ
B. オセロゲーム
C. クーポン券
D. ストップウォッチ
A. 麻雀パイ
月のない明るい夜に道ばたで、麻雀パイを、手渡される
掲出歌は、永井祐の第一歌集『日本の中でたのしく暮らす』の連作「アイデア」に収められた一首です。
通常「道ばた」で手渡されるものは何が多いでしょうか。忘れ物でしょうか、手紙でしょうか、お金でしょうか、差し入れの食べ物でしょうか。いろいろなものを手渡される状況はあるでしょうが、「麻雀パイ」を手渡される状況というのはかなり珍しいのではないでしょうか。
どういう経緯で、麻雀パイを手渡されたのかもよくわかりません。「月のない明るい夜」「道ばた」という情報しかありません。例えば、自分の家で友達と麻雀をした後、友達の帰り際玄関の外まで見送った際、友達の一人がこっそりしのばせていた麻雀パイを返してくれた、あるいはポケットに紛れ込んでいた麻雀パイを見つけて返してくれた、といった状況なども考えられます。または麻雀をした日とは別の日に、「この間麻雀したけど、そのとき麻雀パイが服に紛れていたんだ。だから返すよ」という感じで、手渡されたという場面かもしれません。あるいはまったく別のシチュエーションで、プレゼントとして渡されたのかもしれません。どういう経緯でというのは、非常に想像を膨らませることができますが、この歌は経緯よりも、夜、道ばたで麻雀パイを手渡されたという状況そのものの異様さというか、ずれというか、珍しさというか、そういった違和感みたいなものを楽しめばいいのかと思います。
読点が二か所ありますが、その効果もあり、手渡されたときの主体の軽い戸惑いのようなものも感じます。
よく考えると「月のない明るい夜」というのも不思議で、月が出ていて明るい夜、または月がなくて明るくない夜ならわかりますが、月がないのに明るい夜というのも、非日常的な場面を表すのに効果を上げているのでしょう。