問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈投げあげし乳歯を空は吸わざれど【 ① 】のようなる雲のひろがり〉 (中津昌子)
A. 衣
B. 井戸
C. 壁
D. 川
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解答 – Answer
A. 衣
解説
投げあげし乳歯を空は吸わざれど衣のようなる雲のひろがり
掲出歌は、中津昌子の第二歌集『遊園』の一連「春の林」に収められた一首です。
子どもの歯の生え変わり時期で、歯が抜けたのでしょう。「投げあげし」なので、下の乳歯が抜けて、空に向かって投げた場面を詠っていると思います。
空に向かって投げあげた歯は、そのまま空が吸ってくれることもなく、再び手元に落ちてくるでしょう。
しかし、主体にとって、歯を投げあげた空はいつもの空とは違うように感じられたことでしょう。
子どもの歯が抜けたこと、そしてそれを投げたこと、それは子どもの成長を実感しているのではないかと思います。
そのような思いが下句の「衣のようなる雲のひろがり」という表現から滲み出ているように感じます。
「雲のひろがり」を「衣のようなる」というように捉えられるところに、主体の穏やかで、柔らかく、安心したような心の状態が窺える、そんな一首ではないでしょうか。