次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】のやうなる白きサンダルに足は翼であればをさめつ〉 (川野芽生)
A. 鳥籠
B. 楽園
C. 瑞雲
D. 洞穴
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A. 鳥籠
鳥籠のやうなる白きサンダルに足は翼であればをさめつ
掲出歌は、川野芽生の第一歌集『Lilith』の一連「転身譜」に収められた一首です。
短歌において、独特の比喩表現を巧く組み込むことができれば、独創的な一首が生まれると思いますが、この歌はまさに独創的な一首といえるのではないでしょうか。
「鳥籠のやうなる白きサンダル」とありますが、通常同じグループには属していないと想像される「鳥籠」と「サンダル」を結びつけたところにとても魅力を感じます。
その結びつきを補強するかたちで、下句の「足は翼であればをさめつ」と展開していきます。ここでも「足」と「翼」が結びついているわけですが、「足」と「翼」の関連性は身体の一部、身体の延長といったイメージですんなりと受け入れやすいのではないでしょうか。
「足」と「翼」の関連性から、「足」と「サンダル」、「翼」と「鳥籠」の関連性につながり、そこから「鳥籠」と「サンダル」の結びつきにつながっているのでしょう。
ただ提示の順番として、冒頭から「鳥籠のやうなる白きサンダル」と示されているところが巧いと感じます。このように提示されることで、読み手はその結びつきに驚くわけですが、この唐突な結びつきの根拠が下句で丁寧に表現されているため、納得感をもって一首を読み終えることができ、同時にこの歌の魅力に包まれるのでしょう。
白きサンダルに足をおさめる、すなわち翼を畳んで鳥籠に仕舞う場面が描かれることで、翼を使っていた時間、つまりはそれ以前の雄大な飛翔の時間を思い描くことができると思います。
歌に詠まれている場面だけではなく、そこから時間的に別の場面をも想像させ、広がりのある歌で惹かれる一首です。