問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈見る者をみな【 ① 】にするような真冬の星を君と見ていつ〉 (服部真里子)
A. 篝火
B. 落丁
C. 衛星
D. 剝製
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解答 – Answer
D. 剝製
解説
見る者をみな剝製にするような真冬の星を君と見ていつ
掲出歌は、服部真里子の第二歌集『遠くの敵や硝子を』の一連「狼を追えば」に収められた一首です。
真冬の夜はしんと冷え、引き締まった空気の中で見上げる真冬の星はとてもくっきりと輝きます。
この歌では主体と君が真冬の星を見ている場面が詠われていますが、見ている二人はしばらく動かずじっとその場で星を見上げていたのでしょう。
「見る者をみな剝製にするような真冬の星」という比喩がとても印象的です。真冬の寒さ、真冬の星の力強さ、そして二人が星をじっと見ていた様子などが、「剝製」という語によって伝わってくるように思います。
剝製になるということは、生きていた動物が死んだ後標本として生まれ変わるわけですが、この星を見上げている二人もまるで凍結してしまったかのような印象を抱きます。
それほどこの歌における「剝製」という言葉が力をもっているでしょう。
主体はこのまま「剝製」になりたかったのか、あるいは「君」はどう思っていたのか、色々と考えさせられます。二人がこのまま「剝製」になってしまえば、その二人は永遠に同じ空間にいられるような気もしますが、それを希求しているのかどうか、そこまでははっきりとわかりません。
しかし、二人の関係が永遠の凍結につながるくらいの魔力じみた輝きをもって、真冬の星は光を放っていたのではないでしょうか。
真冬の星の輝きが単に明るいことだけではないことが伝わってきて、印象に残る一首です。
ポチップ