問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】を重ねるように同意する ポットのお湯も沸きはじめたり〉 (安藤美保)
A. パイ生地
B. 下敷き
C. 白地図
D. 靴下
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解答 – Answer
B. 下敷き
解説
下敷きを重ねるように同意する ポットのお湯も沸きはじめたり
掲出歌は、安藤美保の第一歌集『水の粒子』の一連「学館」に収められた一首です。
ポットのお湯が沸く前のひととき、相手の意見に同意した場面でしょう。
どのように同意したかというと「下敷きを重ねるように」同意したのです。
下敷きは、大体同じくらいの大きさのものが多いですし、その両面は平らになっているため、重ねると隙間なくぴったり重なるものです。
つまり「下敷きを重ねるように」というのは、相手の意見に対して反対意見や違和を提示せず、まったくそうであると同意したということなのでしょう。
しかしこの同意が本心からの同意であるかどうかは何ともいえません。下句の「ポットのお湯も沸きはじめたり」という状況が、わずかではありますが落ち着かなさを表しているようにも感じるからです。お湯の沸きはじめのぐつぐつとした音は、完全なる平穏ではなく、平穏の中にかすかな不穏があるような印象を受けます。
もちろん素直にとれば「下敷きを重ねるように同意する」はまったくの同意として受け取っていいのでしょうが、お湯が沸くという状況が示されることで、どこか素直に受け取ってしまっていいのだろうかという思いを読み手に与えているように感じます。
読み手のそのときの感情や置かれた立場によって若干読み方が左右される一首かもしれませんが、「下敷きを重ねるように」という喩が巧みな歌だと思います。